「マチ工場のオンナ」の劇伴ができるまで
昨日、第4話が放送されました
NHKドラマ10「マチ工場のオンナ」、皆さま楽しんで頂けておりますでしょうか。
実話が元となっているこのドラマ。
私は毎週楽しみでもあり、不安でもあり、、
多くの方にドラマと劇伴を楽しんで頂いてることを、祈るばかりです。
さて、今日はそんなマチ工場の劇伴がどうやって作られていったかをご紹介したいと思います。
ドラマの劇伴は、主にこんな感じで作られています。
(図1:登場人物相関)
NHKの場合は、音響デザイナーさんという肩書きのみなさまがドラマの効果音から劇伴まで、音に関することを全て担当されています。
以前ちらっとここにも書いたのですが
このマチ工場を担当されている音響デザイナーさんが、大のアニメ好きでいらっしゃり、落語心中も見ていて私のことを覚えていて下さったようです。
そして今回、ドラマの音楽を「ジャズテイストにする」という方向性にあたり、候補に名前が上がり、、、制作のみなさまとの会議の上、、私に決まったようでした。
大体いつも作品のためのデモを作ったりしてから決まる(落語心中の時は13曲デモを書いてから決まった)ので、今回いきなり「ドラマの依頼があるよ!」と事務所から電話をもらった時は
「えぇ〜〜〜〜😵いきなり?!私で?!大丈夫なのか〜〜??!!」と思いました。
その不安は、的中するのです。
そののち私は大いに、悩み、苦しむこととなるのです。
劇伴のオーダーは主に2つの点が重要なポイントでした。
・町工場の機械の油臭さ(これがかっこいいのですが)を感じる
・でも女性らしさを感じること
そして、それらをジャズテイストで。
というオーダーで
主に打ち合わせではその「ジャズテイスト」とはどのようなサウンドであるか、ということなどをお話しました。
「ジャズ」といっても、色々なジャズがあるわけで、、
オーソドックスなジャズを目指すのか、劇伴としてのジャズを目指すのか?
どんな楽器を使うか、民族的なアプローチもありか?
金属音をサンプリングして使うのもありか、、、etc.
まとめて、「町工場感と女性らしさを感じるジャズ」とは???
😵
分からない😵
そもそも町工場ってどんな?
機械っぽいジャズ?
女性らしいってことは、、重心も軽め?ってことはスイングじゃない?
というわけで町工場っぽいジャズの曲をとりあえず書いてみたものの、、、
『コレじゃない感』
(図2:焦る澁江)
結論は出ぬまま、8月半ばの打ち合わせからは半月が過ぎてしまい、9月の頭
私は、原作「町工場の娘」を書かれた諏訪社長率いるダイヤ精機さんを実際に見学させて頂きました。
そこで、ドラマの内山理名さん演じている「有元光」のモデルである諏訪社長にお会いし、そして初めて「町工場」という場所に足を踏み入れたのです。
実際に動く機械、そして職人さんが作業しているところを見させて頂いた私はようやく「なるほど」と、思ったのです。
機械油にまみれた古い機械が動いているのを見た時、頭の中にバリトンサックスとバストロンボーンの音が聞こえたのです。
でも、重いわけではなく、ザクザクと前に進んでいく音。
ファストスイング、マイナーコードから始まるメロディー、中音域で密集してる積み方、、、などなど音のイメージが湧いたのです。
しかしここからもまたまた大変で、、、
なんにせよ、澁江はまだまだ経験不足なのです。
劇伴としての温度感とか、ドラマの「メインテーマ」として必要な構成、などを捉えることができず
音響デザイナーさんと何度も何度もやり取りして、メロディーの方向性、構成などを修正していきます。
そしてvol7でしょうか。。。やっとOKが出たのが、今ドラマで流れているメインテーマです。
メインテーマの修正をしつつ、サブテーマやそのほかのカテゴリーの曲を書き進めて行き、、、
全部で38曲書きました。
えーーーっと。。。ほ、ほんとうに、たの、たのしカッタ。。。デス。。。
というのは冗談で、、やり取りが本格化してからは自分が今まで生きてきた中で心の底から全力を尽くした一ヶ月間だったと思います。
劇伴は、決して作曲家一人で書けるものではないのです。
音響デザインさん(音響効果さん、音響監督さん、名前はそれぞれですが)との二人三脚であり
素晴らしい音響デザインさんとお仕事すると、自分が書けなかったものが書けたり、自分でも知らない自分の引き出しを開けてもらえたりするのです。
そのほかにも図1参照、事務所の方々のサポートあり、私を選んでくださった演出家の方々のおかげであり
このような多くのプロセスと多くの人の助力を得て、やっと自分の名前が「音楽 : 澁江夏奈」と放送されるのです。
ありがたや。
と、こんな感じでマチ工場の劇伴はできていったのですが、伝わったでしょうか。
ちなみに一番最初に書いた『コレじゃない感』の曲は、ちょこっとリアレンジして別カテゴリーの曲に採用されました。
どの曲かは、、秘密ですが、今まで2回登場しており、どちらもシーンにぴったりで嬉しかった。
メインテーマには向いてないけど、脇役としては優秀だった。
ということなのでしょう。
つまり、メインテーマにはパワーもアクも強くて、キャラクターがはっきりしている曲が求められるということですね。主人公だものね。
そしてそんな曲が書けたのは、私一人だけの力ではないし、
ドラマに携わる全ての人の想いが詰まっています。
それでは「マチ工場のオンナ」もう残り3話ですね。。。
ダリヤ精機はどうなってしまうのか?!
かっちゃんは?!純ちゃんは。。。?!
2017年のドラマ納めは「マチ工場のオンナ」で決まり!!
最終回まで、一緒に楽しみましょう!